先日、株式会社東芝EMIの上山淳執行役員法務部長が来た。

部長はレコード協会の法制問題副委員長もやっているが、学校で講演するというのは初めて、ということで少々緊張した面持ちだった。






アーティスト契約とは、

・アーティスト(歌手や演奏家などの音楽の活動家)の演奏・歌唱を独占的に収録してレコード原盤(音源マスター)制作。
・レコード原盤を独占的に複製、頒布、音楽配信
・レコード原盤の利用に応じてアーティストや原盤権者(原盤制作費の負担者=レコード製作者)へ対価を支払う→印税方式





契約の種類
・専属実演家(アーティスト)契約…アーティスト、プロダクション、レコード会社(プロダクションがない場合も)
・共同原盤制作契約…アーティスト、原盤会社(原盤権を持つ会社)、レコード会社。
・原盤譲渡契約…原盤会社(プロダクション)、レコード会社。
・原盤供給(独占ライセンス)契約…原盤会社(プロダクション)、レコード会社。






レコード原盤の制作費(スタジオ使用・編集・編曲・伴奏・録音の素材の各種費用)
・専属…レコード会社100%費用負担…レコード製作者隣接権の原始帰属、実演家隣接権の譲渡(契約書でアーティストから譲渡させる=販売をスムースにする)
・共同…レコード会社と原盤会社が共同負担…原盤会社持分のレコード製作者隣接権と実演家隣接権の譲渡(リスクのヘッジ)
・譲渡…原盤会社が100%費用負担…レコード製作者隣接権と実演家隣接権の譲渡(プロダクションやアーティストが自分で投資していくため)
・供給…原盤会社が100%費用負担…レコード製作者隣接権と実演家隣接権の契約期間中の譲渡(レコード会社にとっては不利)






契約期間とレコード原盤の利用時間

・契約期間とは、アーティストの専属とレコード原盤を独占的に制作するための期間…2〜5年…作品数の最低保証(この期間に何枚オリジナルのフルアルバムを作るか、東芝EMIでは1年に1枚)
・制作した原盤の独占的使用期間…専属・共同・譲渡:著作隣接権存続中…供給:契約期間中





アーティスト及び原盤権者への対価(1)
・専属;実演家(アーティスト)印税
・共同:実演家印税と原盤印税
・譲渡・供給:実演家印税を含む原盤印税





アーティスト及び原盤権者への対価(2)
印税率:実演家1%〜、原盤13%〜(共同の場合は持分に応じて按分する)。
算定基準:(小売価格−ジャケット代)×印税率×正味(または見做し)出荷数。
ジャケット代:市販価格の10〜15%
正味出荷数:出荷数−返品数(NET)
見做出荷数:出荷数の80〜90%
ex)実演家印税の計算例:(3000円−450)×1%=22.5円…アルバム1枚当り。






アーティストの専属
・アーティストは、契約期間中、第三者の利益のためのレコード原盤収録を目的とする実演をおこなわない(他のレコード会社の仕事をしない)
・レコード会社は、契約期間中、レコードの複製・頒布・音楽配信のためにアーティストの名称・肖像を独占的に使用し、第三者の使用を排除できる
・アーティストは、契約期間終了後も、一定期間、契約期間中に収録した作品について、第三者の利益のためのレコード原盤収録を目的とする実演をおこなわない




海外アーティストとの契約

・メジャーレーベルのアーティスト:通常、自動的に系列グループ会社が日本での独占権を持ち、内部の包括的相互契約にて処理
・インディーレーベルのアーティスト:作品またはレーベル単位の原盤供給(独占ライセンス)契約を締結
・原盤印税の算定は卸価格を基準




アーティスト契約の周辺契約
・プロデュース契約
・プロモーション契約…宣伝…印税で支払われる=契約時には支払われない
・原盤使用許諾(ライセンス)契約…非独占的に借りること
・原盤制作委託契約
・著作物使用許諾契約(楽曲・写真・絵画etc.)



という内容だったが、この講座のテストは明日だった。